閃輝暗点
2010-01-12


禺画像]

この名前を知ったのは50歳過ぎの頃だった。
ある日突然視野の中にギザギザの光が現れ、真っ暗になり目を開けても綴じても閃光だけが見えるのだ。 30分くらいで収まった。

凄い恐怖感に襲われて眼科医院に駆け込んだ。
年配の女医さんだったが こともなげに
「閃輝暗点でしょう。 最初は皆さん驚かれるけれど全然心配ないですよ」
詳しく説明して貰ってホッとした。
脳の血管収縮で起こるらしいが原因も治療法もまだ判ってないとのことだった。

それから癖になったのか再々起こる。 不安はなくなったが突如として起こるから不便きわまりない、
家ならベッドで30分寝てれば嘘のように治る。多少の頭痛はしたが私の場合は軽かった。
電車の中ならうつむいて寝たふりしてれば降りるころには見えるようになっている。
繁華街での買い物の途中は困ったな。  喫茶店などに飛び込んでじーっと目を閉じて時間の経つのを待った。

段々発作が間遠になり、自然の多い所に転宅したり、環境の変化で忘れていた。

それが昨年暮れに風邪をこじらせて、やっと治ったと思ったら、閃輝暗点がやってきた。  昔より症状は軽いが不愉快なことに変わりは無い。
別の病気だと放って置けないから信頼している眼科医院に行った。
「閃輝暗点ですね」
「網膜はく離とか、緑内障とか黄斑変性症とか脳腫瘍とかの心配ないですか?」
真剣だけど言ってるうちに、五月蠅い患者だなと内心照れてしまう。
「全然 心配ないですよ」
と案の定、先生に笑われてしまった。
初体験から30年経つのに原因も治療法も判らないそうだ。

幸い新年になってからは平穏だ。
今ネットでちょっと確認してたら、
芥川龍之介の晩年の作、「歯車」の龍之介が激しい頭痛とともに目にした歯車は閃輝暗点だといわれてる、
との記事を見つけて、立派な芥川龍之介全集を買ったほど好きだった彼が同病だったとは とチョッと嬉しくなった。

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