布団今昔
2010-09-22


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朝方は夏掛けの布団だけでは肌寒く感じるようになった。 秋を感じる。
布団といえばテレビのドラマで病気で臥せっている父親が、寒いでしょうからもう一枚掛けましょうと気遣う娘に、重いからいい という場面が有った。
それで父の病床でのことが思い出された。

昭和22年、父は肺炎で、座敷で寝ていたがその頃の布団は現在のような羽毛も軽い化繊もなくて重かった。
戦前は年に一度は中の綿を打ち直しに出し、ふわーっと長い布状に畳まれたのが届けられ、布団を仕立て直したものだ。
家族全部の布団の綿入れ作業は大変だったろうが子どもにはお祭りの様な楽しさだった。
綿を入れ替えたお布団はふかふかして気持ち良かった。

戦争末期から戦後の混乱時には、そんな余裕も無く来客用の上等な掛け布団を出して来ても矢張り重かった。
それで布団を吊ることになった。
私は初めて見たが昔は病人のためによくやったそうだ。
細かいことは忘れたが、掛け布団の真ん中を紐で固定して、その紐を天井に打った5寸釘にひっかけて持ち上げるのだ。
その分布団は軽くなる。
寝ながら見上げていた父が
「布団を吊るようになったら もう終わりだって言われたものだなぁ」
ポツンと 呟いた声が耳に残っている。 1週間持たなかった。

56歳で逝った父が私の歳まで生きていたら、軽くて暖かい布団を喜んだだろうに。
軽過ぎて物足りないくらいの羽布団にくるまって 今の贅沢をしみじみ思う。

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